友人の誘いで今年の3月くらいから俳句を始め、昨日、初の吟行に参加してきました。
参加したのは、堀本裕樹先生が主宰するたんぽぽ句会の等々力吟行。参加者は10数名。堀本祐樹先生、アドライフのスタッフの方、参加者の方々とともに散策した後、カフェに移動して作句、そのまま句会という流れです。
本日の兼題は「緑陰」。木陰のことですね。
ネタ集めも兼ねて写真を撮ったので、写真とともに。
突如出現する別世界
大井町線の等々力駅を降りてすぐのところに、等々力渓谷への入口があります。近くには環状八号線が横切る都心ですが、「まさか、こんなところに?!」という驚きとともに渓谷への入口がぽっかりと口を開けており、一足踏み入ると、一気に別世界へ連れて行かれるのでした。
渓谷は地上から少し下がった位置にあるのですが、入ってすぐに「涼しい」と感じます。他とは少し違う空気が流れてる感じ。
渓谷の中はとにかく光と影のコントラストが美しく、鮮烈な緑と黒にも近い深い緑、白のハイライトの組み合わせは、トレンツ・リャドの絵画を思わせる鮮やかさでした。
耳を澄ますと、川のせせらぎと蝉の鳴く声が大半を占めていて、それが折り重なって、次第に自分もそこに溶け込んでしまうような感覚を覚えました。
奥へ奥へと続く渓谷は、遠くへ行くほど白みがかった感じになり、その色彩の濃淡が、まるでターナーの絵のようでした。これには感動しました。この感動を何とか写真に収めたいと思ったのですが、そううまくはいかず。少しでもその感じを出したくて加工してみたのですが、どうでしょうか。。(真ん中)
上を見上げると、木々の濃淡もとても美しかったです。緑の濃淡も美しいのですが、その緑を少し奪ってモノクロに近い感じにすると、これがまた綺麗でした(右)。
「緑陰やコントラストの美しき」
「せせらぎに蝉鳴きつれて吾混じる」
「夏木立ターナーの淡き光かな」
古墳の頂に いにしへの風が吹く
渓谷から少し寄り道すると、大塚古墳を訪ねることができます。古墳なんていつ以来?初めてだっけ?って感じでしたが、そこにそびえているだけで、昔の空気を感じることができたりして。古墳を昇り始めるとすぐ、肌に感じる風が少しひんやりと変わったのが印象的でした。
頂には大木が植えられており、古代のお墓を守っているかのようでした。
一応、出土したときの状態とかもあったりして。冑が胃になってたけど(笑)。
前方は小さめでしたが、ただただ土で固めた幾何学模様が、当時は人工物の象徴だったんだろうなー、なんて。
渓谷へ戻る途中、アスファルトの熱がすごくて、まるで悲鳴を上げているようでした。
「大木の墓守ありて風涼し」
「アスファルト湧き立つ熱の叫び声」
渓谷はさらに奥深く
渓谷を奥へ進むと、緑は一層深く、鮮やかに。緑の葉っぱをじっと見てると、さらに上の木々が揺れて日向と日陰を繰り返し、1枚の葉っぱが、まるで緑色に燃えるかのように明るい緑と深い緑を行ったり来たり。何とも言えませんでした。
途中、由来を書いた立て看板に、針の止まった時計が埋め込まれていました。少し暗い緑を「青葉闇」として古い時計が止まっているのを詠んだ方がいて、とても素敵でした。青葉闇って使い慣れないけど、こんな感じ?(一番右)
上を見上げたら、1か所だけ葉が紅く色付いていて、そこだけ少し時間の流れが違うのを感じたり(左)。
何気なく撮った写真に、存在感のある木が移っていました。ハリーポッターとかに出てきそう(真ん中)。
暗がりから明るいところへ抜ける階段って、なんか好きです(右)。
この辺は一層暗く湿った感じで、シダがたくさん生えていました。シダって好きなんですよねー。途方もないくらいの膨大な時間が流れてきたのを感じられるので。
「緑陰の明暗かわるがわる燃ゆ」
「緑陰や古きに馳せるシダの蒼」
人生初の生滴り
さらに先へ進むと庭園のようなものがあり、上まで登ると爽やかな芝生の広がる広場が。広場に隣接する茶屋のような民家で、冷たいお水が飲めました。広場でくつろいでいると、同行した方が「下で生滴り見れますよ!」と言うので、生滴りってなんじゃと思いながら行ってみると、神秘的な光景が(右)。まるで、岩から水滴が沁み出してくるような感じで、とめどなく滴り落ちる。ふと斜め上に目をやると、苔に滴る水滴が、ときおり金色に輝いていました(誇張ではなく!)。滝本の冷えた神秘的な空気と相まって、幻想的な空間を創り出していました。
「滝本の空気冷たし夏の午後」
「金色に煌めく苔の滴るや」
階段上の不動尊にて
不動尊へ続く階段の麓の茶屋でラムネを買いました。ガラス瓶にビー玉の入ったラムネは、色も音も涼し気。ラムネって、ちょっと淡い青春の匂いしますよね。
上へ昇ると不動尊が。櫓(やぐら)の木と緑のコントラストが綺麗でした。
一応、お賽銭を投げて祈願したのですが、投げた10円玉が賽銭箱に入らず、向こう側へ落ちました。。
おまけ。きったないプラスチックの箱に入ったジオラマを撮って、ジオラマ風に加工してみました。
「ラムネ瓶ビー玉塞ぐ恋の道」
「夏シャツの朱に交わりて社かな」
ドッグカフェで句会
散策は終わり。不動尊を出てドッグカフェへ。ドッグカフェというところに初めて行きましたが、知らない犬同士の出会いの場にはち合わせるというシチュエーションが楽しかったです。
ビールを飲み飲み、スパゲティを食べ食べ、作句。同じ景色を見てきたので、自分が詠みたくて詠めなかった句が出てくると感動。言葉の引き出しを持つこと、感覚と言葉をつなぐイマジネーションを拡げることが大切だなあ、と。
今回、以下の句で先生から佳作をいただきました。
「緑陰の明暗かわるがわる燃ゆ」
おわりに
吟行の良いところは、参加者全員が、作句のもとになった情景を共有できるところにあると思いました。誰が、何を、どう感じて、どのように言葉にしたのか。そのプロセスが見えてくるようで、とても勉強になるし、何より楽しい。
都合さえつけば、また参加したいと思います。みなさま、ありがとうございました。
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撮影:iPhone 4
加工:TiltShift Generator 2.02
堀本裕樹先生の活動は以下のブログで知ることができます。
>> 堀本裕樹公式ブログ